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日々の生活から気になる事柄やものたちを、日記を通して紹介していくサイトです。水曜日には「やわらかい英文法」と題して、英語に関することを載せています。(平成23年3月現在)
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もともと出不精な私は、寒くなると余計に家にとじこもりたくなる。
かと言ってまめに家事をするのかと言ったら、そりゃまた別問題だ。

 アイロンされるのを待っているシャツやハンカチたちの山が、日ごとに大きくなっていくのを視野の隅のほうで確認しつつも、見なかったことにして、ハルとじゃれたり、雑誌をめくったり、ちょっと勉強みたいなことしてみたり。

 アイロン超嫌いなんです。

 嫌いなことは、ながら作業でごまかすに限る。
ということで、アイロンの時間イコール、私のテレビを見る時間 映画鑑賞の時間となる。

 右手を絶えず動かしながら、河瀬直美監督の 「沙羅双樹」を見始めた。
でもすぐに、河瀬監督の映画は、何かをしながら見れるようなものではないことに気づいた。
 
 台詞が少なく、つまりそれこそ言葉で何かを説明することを忌み嫌うほどに少なく、目の前の圧倒的な映像を、そのままポーンと無垢の状態のまま見る側に気前よくあずけてくるのだ。映画の原点て、こういうものなのかなと思った。

 この沙羅双樹では、監督自身も役者として 重要な位置を担っている。

 お産のシーンは、自分のお産を思い出すほどにリアルだった。
これまでドラマや映画で見たお産の典型的シーンは、うそ臭さ満点の騒ぎ過ぎ、ってやつだった。

 お産は、陣痛と次の陣痛の間は結構普通でいられるものだ。私なんてまだ間隔があいている時は居眠りしていたくらいだから。

 河瀬映画は、余計なことをしない。役者に演技をさせない。(出演した役者さんは、演技する。ということについて改めて考えさせられるのだろうな。)商業的なうけをねらわない。そして私たち観る側は、価値観を試されてしまうのだ。

 実際私は、カンヌで新人監督賞を受賞した「萌の朱雀」をあまり理解できていないと思う。

 それでも私は河瀬さんの映画が好きだ。河瀬さん自身も好きだ。

 あの器のでかさは、やはりただものではない。半端なく器がでかい女性というのは、女神に近い。男性はたちうちできないだろうな。

 そういえば最近もうひとり女神を見つけたの。
写真出版社 赤々舎代表の 姫野希美さんだ。
無名の写真家を年月かけてじっくり見守り世に送り出す。

 二人には大きな共通点がある。商業ベースでけっして動かないところだ。
 
 女神たちの活躍を陰ながら応援したい。

そして私のアイロンの山は増えるばかり。

 


 
 
 
忙しい朝の一こまに必ずしていることがある。

とりあえずさーっと一通り、朝刊に目を通すことである。
その一環として、必ずラテ覧にもチェックの目を入れ、いい映画や気になる番組がないかを確かめるのである。

 毎日それを繰り返していると面白いもので、番組内容をまったく知らないのに、番組タイトルだけでやたらと惹きつけられるものが出てくるのだ。

 NHKhiビションのテレビ覧に、猫のしっぽ とだけ書かれたそれを、気になって仕方がなくなるまでにそう時間はかからなかった。

 それでも忙しさに紛れて日々が過ぎていった。

 ある日の兄との電話中、兄の口からその番組名が飛び出したのでびっくりした。

見てないのなら見たほうがいいよ。あなたにすごく合った番組だと思うから。と。

 実際の番組名は、 「猫のしっぽ かえるの手」という、より愛らしいものだった。

 英国から日本に移り住み、現在京都大原の古民家で暮らしをたてているベニシアさんの日常がていねいに映し出される。

 自然を愛し、古いものをいつくしむベニシアさんの生活は、季節の移り変わりとともに素敵な彩りがそえられる。

 丹念に育てられたお庭のハーブが、料理や薬、季節のオーナメントとなって活躍する。

 ベニシアさんに憧れるのはもちろんのことだが、ベニシアさんに所有されたものたちが、とてもうらやましく思える。

 ふっくらとしたベニシアさんの手で、育てられ磨かれ愛されているからだ。

 それにしても、こんな素敵な番組を私に合った番組と兄が言ってくれたことが、嬉しい。

 実際のところ、忙しさを言い訳にしながら 人に対しても物に対しても細かい思いやりを忘れがちになっていることを反省しつつ、目指している方向はベニシアさんの生活だからだ。

 ほったらかしにされてベランダでしおれてしまった鉢植えを見て、ごめんね、私変わるから。と手を合わせる。
 

 
「そろそろ飛び始めたよね。」

これを聞いて、本当に。と即答できる人はその後こんな風に続けるのでしょう。
「目の周りが痒くなりだしたし、鼻の奥もちりちりずるずるする。」

 花粉に敏感な人は一月上旬で違いがわかってしまうのだ。
いばるわけじゃないけど、私もその違いのわかる輩の一人だ。

 新型インフルの影響で、マスク人口が軒並み増えてしまった今では、花粉防御のマスクも季節感を失ってしまうなあ。と どうでもいいことを考えていた。

 外出時に、みんながみんな常にマスクを着けるようになったらどうなっちゃうのだろう。この先の未来を変えてしまうかもしれない。

 だってマスクをして帽子をかぶった日にゃ、知っている人でもお互い気づかずに素通りする可能性大だし。

 マスクをしてなかったら、一目ぼれをして結ばれていたかもしれない男女も、ただの通行人すらの意識もなく、通り過ぎていってしまうでしょ?きっと。
少子化傾向に拍車をかけるかもよ。

 これは問題でしょ。絶対。

 人としての基本である、ご挨拶がまず危機にさらされる。
偶然出くわした旧友との再会に手を取り合う可能性も断たれる。

 それに顔のほとんどを覆うというのは、言ってみればドラえもんのお面つけているのとあんまり変わらないわけで。
 
 お面はより人を閉鎖的にするわよ。私の独断だけど。

 それでなくったって、テクノロジーが私たちを、形だけのうすっぺらな自分の世界に追いやっているというのに。

 なので私は鼻水たらしてでも、このまま外を歩こうと思う。



 



 
 日曜日に兄と待ち合わせて父のお墓参りに行った後、母のいるグループホームを訪ねた。     きみさん、きみさん、ちいちゃんだよ。と言うと、その言葉の内容というよりも声に反応してこちらを振り返る。

 投げかける視線は、特有の、焦点が半ば合ってないようなものでありながら、私たちにはお馴染みの いたずらっぽさは健在だ。

 グループホームのスタッフの方々は、私のことを’ちいちゃん’と呼ぶ。
「きみさん、ちいちゃん来てくれてよかったねぇ。」というふうに。

 きみさんは、私を自分の娘だとは理解できない。
でもいろんな場面できみさんの口から’ちいちゃん’は出てくるらしい。

 以前きみさんに抱き人形をプレゼントしたことがある。
母であった時代を何かの形で呼び戻したのか、きみさんはそのお人形さんに夢中になっていた。  時折呼びかけるときに’ちいちゃん’と呼んでいたことをスタッフの方が教えてくれた。

 何もわからなくなってしまったきみさんをかわいそうに思い、また、生きてくれてはいるものの、コミュニケーションが成り立たない状況に母を失ったような気持ちになり、今までに何度も泣いた。

 「きみさんはね、私がつらいことがあるのを抑えながら気丈にふるまって仕事をしていると、大丈夫よ。とそっと肩を抱いて覗き込んでくれるのよ。」
 
 あるスタッフの方のこの言葉が私を救った。

 現在はその時よりも認知症がすすみ、言葉もほとんど出なくなってしまったが、私たちと違った回路で、何かを感じているにちがいないと思える。

 ソファーにふんわり座っているきみさんの隣に、ぴったりとくっつき、きみさんの手をとる。きみさんの体温が腕から 手のひらから感じられる。

 きみさん。あなたの中にいる’ちいちゃん’は、まだまだ小さいのですか?

 
もしも自分の愛する人が、命にかかわる重病のため緊急手術を要し、高額のお金を工面しなくてはならない状況に直面したとしたら、人はどう行動するのだろう。

 映画「やわらかい手」のマギーは、孫の命を助けるためにやむなく性産業の世界に足を踏み入れる。それまで目覚めさせる必要のなかった”黄金の手”を使って、彼女はその世界で頂点を極め、息子夫婦と孫の 病院までの渡航費用、そして手術代を稼ぎだす。

 そこへ行き着くまでの彼女の葛藤 苦悩 諦観 達観は、それぞれのシーンで彼女の表情や身体からじみ出ている。

 マギーのやっていることは、大きな声で言えるようなことではないのに、彼女を美しいと感じるのはなぜなのだろう。

 それは多分彼女が、いつのときでも大事なものは何かを把握し、それを軸に余計なものをそぎ落としながら潔く生きているからだと思う。

 彼女の魅力は、言葉より多く語るあたたかいまなざしであり、そして時にそれが人間のうわっつらを見通してしまう鋭いまなざしに変わることである。

 人がさげすむようなことを経験したからこそ、またその世界の人たちと人間的なかかわりをもったからこそ、彼女のものの見方がよりゆるぎない焦点をしぼりだす。


 この映画も、今はなき筑紫哲也さんが番組でお勧めの映画としてあげていたもの。
私は、実際のテレビ番組は見損ねて、後々本を読んでいて知ったのだ。

 筑紫さんはどういう解説をしていたんだろう?
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