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日々の生活から気になる事柄やものたちを、日記を通して紹介していくサイトです。水曜日には「やわらかい英文法」と題して、英語に関することを載せています。(平成23年3月現在)
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例えば、「ゴッホのひまわり」が58億円で落札されたのを知った時、
その数字そのものに驚きながら私は別のことを考えていた。

「本物である」と判断あっての「58億円」。でももしも贋作だったら、
無価値に近い。 58億かゼロか。この決定的な判断につきまとう危うさと
もろさと、人間の思い込みについて考えていたんだ。

昨日、「鑑定士 顔のない依頼人」という映画を劇場で観て来た。
監督は、あの「ニューシネマパラダイス」や「海の上のピアニスト」の、
ジュゼッペ トルナトーレ。

オークションシーンが何度となく銀幕に現れる。
一流の鑑定士であり、またオークショニアでもある主人公ヴァージルオールドマンが、
オークションを仕切る姿は実にきびきびしていて隙がない。
声のトーンや強弱、表情、テンポをうまく操り、美術品の値をあっという間に釣り上げ、
最後にオークションハンマーを小気味よく振り下ろす。

老齢になるまで真から人と交わらず、壁にかけた肖像画から放たれる女性たちの視線のみに心
を開いてきたヴァージルが、初めて一人の生身の女性に心を奪われ、乱され、オークション
でも失態を演じてしまう。機械人形のような完璧なヴァージルが、血の通う人間になった瞬間
でもある。

はじめから終わりまでストーリーの根底にあるのは、本物と偽物。
それは絵画のことだけに限らず、人間の愛情にまで及び、疑問を投げかけていく。

で、ここで私は思うのだ。「価値」とはいったい何なんだろう、と。
壁に飾ってある絵画を心から愛でていたのに、ある日偽物とわかった途端に興味が
消え失せるとすれば、その人はその絵を愛していたのではなく、「本物である」こと「高価
であること」をただ気に入っていたということだ。

ある価値観が世の中の傾向にうまく乗っかっていく。するとあっという間に多くの人々を取り込み、
たくさんの人が「すごいすごい」と騒ぎ出す。

我々の高校時代、「ロックは不良の音楽」と言われていた。
あの頃優等生側にいて白い目を向けていた人達さえも、今になってストーンズのコンサートに
行くのはどうしてなんだろう?

「本物と言われている物」に人々はこだわり、それらとかかわり合おうとする。
でも私は偽物でもいいと思っているんだ。それよりも自分がいいと思うことを大事にしよう
と思って。それがたとえこの世の中で偽物だったとしても、私の世界に入り込むやいなや
「本物」となるのだ。

それとね、もうひとつ思うのは、この愛は本物か偽物か・・と言ってる時点でもう怪しい。
だって「価値」という言葉で測れるようなものじゃないでしょ? 
たぶん「愛」って。






真っ赤なもみじが縮れて落ち始めるのを境に、気温がグーン
と下がるのを毎年感じている。

これ以上は赤くなれないギリギリのところで耐え切れなくなって、
熟した葉っぱがその手を離し、空中を舞い、地面に順序よく重なっていく。

「赤い」というだけで興奮する自分がいる。
「赤」を見つけると、思わず駆け足になる。

それは夏のよく熟れたトマトだったり、絵画にのせられたわずかな一点であったり、
農道の彼岸花だったりする。

雪がしんしんと降る北国で、お母さんのねんねこに包まれていた赤ちゃんのほっぺた
も、りんごより赤かった。

血液の色でもある「赤」は、心をざわざわさせる色でもある。
よどみなく流れる血液が生命の証であるならば、「赤」は生命の色だ。

生命の輝きが、その主張が、その鼓動が、私にエネルギーを与えてくれる。










自分の吐いた息がわずかに白く見えた今朝の散歩道。
本格的な冬の到来か。
マフラー・帽子・手袋で冷気を遮り、コロモのいっぱい付いた
海老天のように、もこもこの重装備で出かけていた。

散歩を終えて、ハルと私が自宅マンション敷地内に戻る頃、
かなりの確率で、(2~3割くらいかな?)管理人のおじさんを乗せたバスが
停留所に到着し、降りてこられるところに出くわす。
でも私は知っているんだ。バスに乗るのはおじさんの本意ではないことを。

おじさんは実は単車のライダーなのだ。
ずいぶん前のことになるけれど、赤い皮のライダーズジャケットに身を包み、
250ccの単車で通勤されていたのを私は何度か目撃している。

単車にまたがっている男性がエンジンをとめる。ヘルメットを引っ張りあげる。
その下に何と、上品で優しそうな管理人さんのお顔が現れた時には、息が止まる
かと思うほどびっくりした。

それ以前から、彼の穏やかだけれど筋の通った物腰、優しくて奥行のある表情に、
この人はもしかしたらすごい人なのではないか、と疑っていたので、その日以来
その思いは強くなってしまった。

そしてその思いは、ある場面を目撃することで、より確かになる。

我がマンションは厳しい決まりがあって、犬を連れてエレベーターに乗ることを
禁じられている。つまり私は毎日ハルを抱えつつ、階段を一段一段のぼって6階に
ある我が家を目指さなければならない。

一階から二階の踊り場で、ひょいと首を伸ばすと、スリガラスの管理室が見える
位置がある。視野の左隅で、何か影が横切ったような気がした私は、つっと歩みを
止めて、その位置から管理人室をしばらく眺めていた。

人の影が走る速度で、スリガラス二枚分に現れては消える。
振る腕がそのスリガラスにこすれんばかりに近づいたかと思うとまたいなくなってしまう。

「管理人さんが管理人室で体力作りにジョギングされているんだ・・」とわかるまでに、
数分ほど時間が経っていた。

管理人さんは、仮の姿で管理人さんをされているけれど、もしかしたら本当は
スーパーマンなのかもしれない。

もしくはロバートデニーロのタクシードライバーみたいに、世の中の矛盾に怒りを
溜め込み、何かを決行するために体力作りをされているのかもしれない。

もしかしたら民意を無視して可決された特定秘密保護法にも怒りの矛先を向けている
のかもしれない。





季節は冬なのに、のどかなお天気が続いてます。
この気候なら早朝の旗振りもさほど辛くないだろう。

小学生の母親にとって、順番に回ってくる横断歩道での旗振りの
仕事が真冬に当たると、とても辛くて。いや辛かったのを今ありありと
思い出した。

私が現役だった十数年前から旗振りはきちんと受け継がれているようで、
平日の朝8時頃車で横断歩道を横切ると、腕章をつけたお母さんが旗を
片手に、子供たちを導き守っている。

それでも子供の卒業とともにお母さんの旗振りは終了するので、10年も経てば
”お母さん総入れ替え”となるのだが、コンビニ前の横断歩道で毎日旗振りをして
くれている”おじさん”は、ずっと同じおじさんであった事実を最近聞かされる。

ある日、車の後部座席に座っていた息子が驚きの声をあげた。
「まだあのおじさん旗振りやってんだ! 俺、実はあのおじさんとマブダチ
なんだよ。」息子が遠くなりゆくおじさんを目で追って、頭を回旋させているのが
ミラーに映った。

「大きい声で「おはようございます!」っていうと、「おっ、今日も元気だね。」
ってよく言ってくれていたんだ。学校休んだ次の日は、「昨日はどうしたんだ?
心配してたんだぞ。」と気にしてくれてもいたし。」

親の知らないところで、子供たちはきっとたくさんの人達に育てられて来たんだね。

今日もコンビニの前でおじさんは小学生を優しく手招きして誘導していた。
おじさんは、子供たちを無事に渡らせると、かざしていた旗を引っ込めながら
停車している私たちに会釈をした。

私もおじさんに会釈をし、ありがとうございます。と心の中でつぶやいた。

自分にとってはとても意味あることでも、他人にとっては取るに
足らないことである場合はままあると思う。

自分の幻想をきちんと現実世界に引き連れうまく仲直りさせた所から、
新たに出発しようと思ったのである。何を言っているのかわからない
でしょ? 一年の終わりである12月を前にして、来年はもっとしっかり
と地面に脚をつけて生きていくために、ひとつのことを終えた。

なんだかすっきりした私は、気持ちよく12月に向き合って、粗大ゴミの処分、
大掃除の計画、コミュニュケーションツールとしての英語勉強プラン、歯医者
さんのアポイントメント、新しいカーテンのオーダーなどにいそいそと取り組ん
でいる。

病気になってから、体とのコミニュケーションも濃密になって、自分の身体に
問いかければ問いかけるほど、よりわかりやすい反応が帰ってくるようになって
きた。コミニュケーションは大事だね。自分の身体も実は色々なことを訴えて
いたのに、私は聞く耳持たなかったんだ。でも最近、まだささやき声ではあるけれ
ど、その流れて行きたい方向性みたいなものが見え始めたんだ。

11月の終わりに、クロゼットから必要以上に大きなクリスマスツリーを引っ張り
出して、例年通り飾り付けた。いくつになっても子供みたいにツリーのピカピカが
好きでね。12月はこのささやかな灯りの点滅とともに暮らしています。


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