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日々の生活から気になる事柄やものたちを、日記を通して紹介していくサイトです。水曜日には「やわらかい英文法」と題して、英語に関することを載せています。(平成23年3月現在)
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例えば、大好きだった映画監督が、まったく今までと違ったものを撮りだしたら、
こちらとしては二通りの反応がある。そうかそんな所に行ってくれたのか・・と、
いったいどうしちゃったんだろう・・。

これはごく個人的な感想なのだけれど、私はあの「チャン・イーモウ」監督に対して、
後者の気持ちをしばらく抱いていた。

最近の新聞広告で、チャン・イーモウの新作映画が紹介されているのを見てドキドキした。
タイトル、「妻への家路」。主演女優、「コン・リー」。
あのチャン・イーモウが戻ってきたのかもしれない。

近くのモールで一週間だけ上映されるのを知り、昨日早速観てきた。
とても美しい映画だった。

時は中国文化大革命、インテリ層が強制労働に追いやられていた時代。
家族は引き裂かれ、いつになるともわからない夫や子供の帰りを待って暮らす残された女達。
時は残酷にも10年、20年という時間を、淡々と刻んで行く。

文化大革命の終結で、囚われの身であった者たちが解放される。
到着する電車を待つ人の波。家族の名前を書いたプラカードを掲げている人もいる。
電車から降りてくる人々。顔。また顔。ひとつひとつ確かめ、探し合う。
20年もの空間を一気に縮めて家族が手を取り合い、再会を喜ぶ。

ひとつの家族の再会は、そのように理想的には行かなかった。
妻であるワンイーが、心の病から部分的に記憶喪失になってしまったからだ。
帰って来た夫を見ても、夫であると認識できない。「夫を待っている自分」というのが、
彼女のアイデンティティの殆どであるはずなのに。

夫のイェンシーは、彼女に自分を思い出してもらおうと様々なことを試みる。
でもまったくうまく行かない。

強制労働先で、妻に宛てて書くだけで出せなかった手紙の束を妻に渡す。
今だに自分を夫と認識できない妻に、「手紙を読んであげる優しい友人」として毎日
妻のもとに通うようになる。このあたりから、私は夫イェンシーの覚悟を感じるのだ。

手紙の中のイェンシーを懐かしみ、恋焦がれる妻。手紙の内容を聞きながら、遠い目をして
幸せそうに聞いている。
実はその手紙を目の前で読んでいる男こそが、他ならぬ自分の夫イェンシーであると気づけずに。

イェンシーは、その時、自分を分断したのだと思う。
手紙を書いた自分、手紙の中の自分、妻の中に住む自分を手放し、独立させて、妻と一緒に
彼らを追いかけ愛そうと思ったに違いない。

認知症の母が生きていた頃、彼女は私によく言ったものだ。「家の子供たちはまだ小さくて
ね、今二階で賑やかに遊んでいると思うわ。あなたのお子さんも小さいの?」
最初のうち、私は悲しくて、「ねー、そのちっちゃい子が大きくなってこの私になったのよ。
そして子供も生んだのね。だから孫なのよ。」などと言い、なんとかわかってもらおうと思った
けれど、母は、毎回「えーっ、そうだったの?」とびっくりしては、次また同じことの繰り返しで、私はとうとうその「小さな私」の存在を、母と一緒に愛してあげようと思い始めたの。

それはそれは不思議な感覚だった。
母の中の「小さな私」を認めることで、私は母が亡くなるまで、寄り添うことができた気が
するの。

5日になると夫が帰ってくる。そう思っている妻ワンイーと一緒に、駅へのお迎えにお供する
イェンシー。
つまり毎月5日になると、イェンシーは自分を迎えに行くのだ。

私は思うのだ。イェンシーは、本当に待ち焦がれているのではないかと。
駅から降りてきた人ごみの中に、自分自身を見つけるその日を。










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